こんにちは、宗生です。
今日は音楽の話をします。
音楽といっても、今回取り上げるのはオペラです。
オペラといっても、実際オペラを見る機会はなかなか無いので、
ピンと来ないかもしれませんが、
それはそれはすばらしいものです。
生のオーケストラが舞台手前のオーケストラピットの中にいて、
指揮者とともに生の演奏を聞かせながら、
舞台の上では演出家の工夫をこらした舞台背景の中、
歌手たちが演技しながら、歌を歌い、セリフを語ります。
生の演奏、生の声楽、そして生の演技を
同時に何時間も連続して楽しむことのできる、
もっともぜいたくなエンターテイメントといえるかもしれません。
オペラは大別すると、イタリア・オペラとドイツ・オペラがあります。
各々が母国語で歌うので、英語以上に言葉はわかりません。
なので、日本で見る場合は、字幕が写ったりしますが、
それを見ながらというのもめんどくさいものです。
結局、家である程度聴きこんで、筋はもちろん、
セリフや歌も知っていたほうが楽しむことができます。
当然海外で見るときは字幕などないので、
いきなり筋を知らないオペラを見ると、
ちんぷんかんぷんです。
私達も、好きとは言っても、そう何度もオペラを見たことは
ありません。多くはビデオで見たり、音だけ聞いたりしました。
私たち夫婦が新婚旅行にいったのはオーストリアのウィーンで、
このときは出発前も含めて、同じオペラを三度も連続で見ました。
それが、モーツァルトの「魔笛」です。
のだめカンタービレでも、魔笛は取り上げられたくらい、
有名で好きな人の多いオペラですね。
知らないなあと思っても、実際に序曲を聞けば、
ほとんどの人はどこかで聞いたことがあるはずです。
もちろんモーツァルトですから、メロディは鉄板で、
ひたすら耳に気持ちいい、快感音の連続ですから、
音だけ聞いてると眠たくなる可能性大ですが、
音以上に好きなのが、筋書きと世界観です。
タミーノ王子とパミーナ王女が、
それぞれ「運命の相手」を求めて探しまわり、
ようやく探し当てても、実際に結ばれるまで、
互いが互いにふさわしくなるまで、
成長することを求められます。
互いを呼び合いながら、なかなかうまく出会えず、
時にすれ違ったり、誤解してしまったり、
さらには命の危険に晒されたりしながら、
それでもただ運命の人と出会うために、
自分を高めるべく努力した結果、
ついに結ばれる。そんな物語です。
このタミーノ王子とパミーナ王女の物語が、
ある意味、高次元的なプロセスを描いているとしたら、
もう一つさまざまに交錯するのが、
パパゲーノとパパゲーナの物語です。
こちらは鳥刺しという、奇妙な鳥人間ですが、
鳥人間だけあって、王子や王女ほど上品でもなく、利口でもない。
ある意味、とても三次元なのです。
ところがこのパパゲーノがとても魅力的に描かれているのですね。
このタミーノとパパゲーノが神殿に連れ込まれて、
修行する場面なんて、
まるで三次元と高次元のやり取りそのままで、
めっちゃ笑えるのです。
例えば「沈黙の行」をするところで、
それを妨害しようと話しかける者がいるわけです。
タミーノは当然黙っているわけですが、
パパゲーノはすぐに「え、ほんと!?」「やばいんじゃないの?」とか
不安や心配をしだすんですね。
そのたびタミーノは「しっ!」「黙れ!」というのですが、
パパゲーノは「どうしよう、だいじょうぶかなあ。やばいよぉ」
とかいって、オロオロしまくります。
このへんのやりとり、まんまでしょ?
魂はどんな恐れがあろうと、運命の相手に行き着くために、
あらゆる難関だろうと構わず立ち向かっていこうとするのに、
三次元の思考は、いつもオロオロフラフラして、
ちっとも定まらない。
それでも、二人は一緒に行くしかないので、
さっさと先に進むタミーノに、
「まってよ~~」と後からパパゲーノが追いかけていきます。
結局、途中で二人は離れ離れになってしまい、
パパゲーノは落第し、あやうく命を落としそうになりますが、
天使たちの助けでオルゴールを鳴らし、
パパゲーナとようやく出会うことが出来るのです。
このへんのイニシエーションの描写も素晴らしくて、
ほんとに見事です。リアルです。
フィナーレでタミーノとパパゲーナは高次元の神殿で結ばれ、
いっぽう三次元のパパゲーノとパパゲーナは、
子供を作って毎日楽しく暮らします。
魔笛を見た人たちはみな、パパゲーノが大好きですが、
それはそんな三次元の良き体現者だからこそでしょう。
こんなふうに解釈しながら魔笛を見ても、
おもしろいかもしれません。
高次元の歩みに、ときについていけなくなってしまう三次元。
それでも高次元の成功が、やがては三次元にも必ず反映されてきます。
でも、それを同調させるのは、なかなか大変な道で、
バラバラになってしまうことだってあります。
運命の相手に行き着くには、
眼の前に立ちはだかる壁や恐れにくっせず、
高次元を信じて進むしかありません。
そんなことが見事に表現されていて、
私は見るたびに胸が震えるのです。
ああ、モーツァルトはほんとにわかってたんだなあと。
私が直子に出会うまで、運命のパートナーに行き着くために、
一番参考にしたのが、この魔的でした。
魔笛のおかげで、彼女に出会えたといっても過言ではありません。
また魔笛には、いたるところに、
秘密結社(フリーメーソン)の儀式がモチーフとして使われていて、
それは「覚醒」を促すものであったことは、
わかる人ならすぐわかると思います。
やたら出てくる3のモチーフとかもそうですね。
秘技参入のモチーフであり、三位一体の象徴でもあります。
次回は、もう一つ、私がもっとも大きな影響を受けた、
「オペラ」というより、「祝典劇」について、
お話しようと思います。
それではまた。
(追伸1)
私がとくに好きな魔笛は、
デイヴィッド・ホックニーのデザインした魔笛です。
同じデザインの魔笛を、東京でも見ました。
このときは小澤さんが指揮してたっけ。
DVDはレヴァインとMETの演奏で、
キャスリーン・バトルがとても可愛いです。
©Muneo.Oishi 2012