2.事例という名の物語

※前章の1.アイントライの意味することから続いています。

@@@

それでは、「アイントライ」すなわち三位一体を示す3つの円の交わる図形について説明していきます。

これらの説明はしかし、スピリチュアルなすべての事象の説明がそうであるように、真実は一つではなく、唯一の真理というものはそもそも存在しません。量子力学からなる宇宙の法則が、観測者の位置に従って変異するように、世界は観測者に従って法則を変えていくのがスピリチュアリズムの基本です。

あなたの世界は、あなたが作り出しているのであって、他の誰でもありません。

もちろんそれは物理的な法則のことではありません。物理法則というのはハードウェアです。ハードウェアはどんなパソコンでも基本的には同一の機能を有しています。その上で動くカーネルやOSといった基幹部分もまた、WindowsやMacOSのようにほぼすべての端末に共通する機能を有しており、そこに差異はありません。

世界が同一に見えるのは、地球という名の物質世界というハードウェアしか考慮していないからです。

しかし、その上で動くアプリケーションは個々により変動していきます。さらにそれらが積み上げていくドキュメント、すなわち情報は同じものは一つもありません。我々が世界を眺め、人と交わり、日々過ごす中で、世界は共通して同じだと思っていますが、すべての宇宙はあなたのオリジナルな肉体と魂のコンバインドされた端末からアクセスされたものです。だから、同じではないのです。

観測者によって、世界の有り様は変わってくるというのは、そういう意味です。なので、これから説明することは、あくまで一つの事例、仮説に過ぎません。

心理カウンセリングや箱庭などの臨床心理学は、すべてが仮設の積み重ねによってできています。なぜなら、証明することはできないからです。しかしながら、そのような仮説によって臨床的に起こってくる心理的な現象を、近似的に理解することで、それまでわけのわからない現象としか思えなかったことを、より深いレベルで理解でき、予見し、さらにはそこに干渉することさえできるようになっていきます。

そのような仮説を精査していくうえで、もっとも重要なのが事例研究なのです。

事例とは何か? 事例とは物語のことです。一人ひとりが辿った人生の道筋、思いと現実の時間的な経過。人生という名の物語を精査に観察していくことで、たとえそれと自分が同じではなかったとしても、その根底に共通したものに近づくことができます。そして、そこから導き出された仮説を積み上げていくことから、目に見えない世界は、徐々に目に見えるように浮かび上がってきます。

例えば村上春樹の物語が、深層に触れたことのある人たちの、個人的体験に繋がりうるのはそのためです。

そうなれば、深層は決して手に触れることのできない場所ではなくなっていきます。それどころか、むしろそここそが、世界の本質に触れる場所であることが理解されます。なぜなら、個々の深層に深まれば深まるほど、その深層はどんどん広がり、存在全てと繋がる場所、次元を越えた場所へとすら繋がることが可能となるからです。もちろんそこでは、私もあなたも繋がり合っています。

これからの説明は、私にとっての真理であり、真実であり、道筋であり、その試行錯誤の歴史に過ぎません。しかし、これらの事例をつぶさに追っていけば、一見かけ離れたものであったとしても、別の誰かにとっての動機と戦略、さらには智慧にさえなりうるのです。

©Muneo Oishi 2015

よかったらシェアください
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次