リュート:
じゃ、不安や恐れも「愛」から出来ているってこと? 怒り、憎悪、破壊、死、そういったものも「愛」だと?
パルファ:
もともと、「愛」は「与える」という性質を持っている。神が人々に与えるために、エネルギーからさまざまな物質や非物質が作り出された。これが「与える」という意味だよ。何物かが、何物かへ、与える。この宇宙に存在するすべては、神が自分の一部を人に送り与えた。だから、このエネルギーは、愛であり、すべてなんだ。
「愛」が無垢なエネルギーのままだった頃、それは強い無限大のエネルギーの固まりだった。そのなかに溶け込んでいる限り、愛は完璧に充足された状態であるけれど、なんの動きもなく、自覚も出来ず、体験もない。ただ存在として、あり続けるだけだった。
愛のエネルギーは、その果てしない快楽のエネルギーの中で、満足しきっていた。でも、あまりに充足している自分自身が、いったいどのような姿をしているのか、どのように出来ているのか、何一つ見ることが出来なかった。愛は、これほどの自分はきっと美しく、すばらしい姿に違いないと予感した。でも、自分を見るには、自分からいったん離れなくてはならない。
しかし、それにはとても大きなエネルギーが必要だった。
リュート:
どうして?
パルファ:
もし、君が自分の腕や、足や、目の玉を自分の身体から切り離すとしたら、大きな苦痛を伴うだろう? いくら自分の姿を見たいからといって、自分の目の玉を取り出さなくては見ることが出来ないとしたら、どうする? 平気で目をくりぬけるかい?
リュート:
無理無理! 鏡を見ればいいのに。
パルファ:
愛が愛しかないときは、愛以外の物は存在しないんだ。だから自分を映し出す物を作るためには、自分の身体を切り離すしかない。それにはとてもエネルギーが必要なんだ。
長い時間をかけて、愛はエネルギーを集中させていった。そのエネルギー源は、好奇心だったんだ。自分をどうしても見てみたい。感じてみたい。未知なる体験に愛はワクワクしたんだ。そしてその、ワクワクするエネルギーを集中させ、強くバイブレーションを高めていったんだ。
そしてついにエネルギーが臨界に達し、愛のエネルギーのわずかな一部が、痛みを伴いながら分離した。愛は自分自身を体験し、味わい、理解し、楽しみたいという意図を持ったがために、愛のごくわずかな一部が切り離された。原初の出産もまた、大いなる陣痛を伴った。
それは、切り離されたと同時に、強いエネルギー転換が起こって、愛は自由という無限小のエネルギーに変化したんだ。無限大の愛の固まりが、極限大の愛と極限小の自由に、分裂したんだね。
無限大の愛をエヴァ、無限小の自由をアダムと呼ぶことが出来る。アダムはエヴァの一部なんだ。聖書では、反対に書き換えられているけどね。遺伝子を見ればすぐにわかる。女性の染色体の方が、男性の染色体よりも大きい。男性にはない遺伝情報を、女性は持っている。
無限大の愛に、無限小の自由は飛び込み、ついに願いがなかったという歓喜と感動で張り裂けそうになりながら、愛を体験し、愛を観察した。そして、その美しさと、心地よさ、無限の快楽にうねりながら、自由はさらなる愛の体験を求めて、愛を分割し始めたんだ。
これは卵子と精子という形で、人の生殖において同じパターンが取られる。
リュート:
ああ、本当だ。愛の生い立ちは、そのまま受精の原型なんだね。大きな卵子に、小さな精子が飛び込んで、受精卵が細胞分裂し始める、生命誕生の過程とよく似てる!
パルファ:
そう。現在の物質や生物には、エネルギーの進化の過程がいたるところに刻印されている。そこをつぶさに観察すれば、原初の成り立ちも理解できる。ゲーテやシュタイナーもそう言ってるね。
さて、自由はさらなる愛の体験を求めて、愛を分割し、愛から様々なものを生み出した。そして宇宙が出来、銀河が出来、星々が出来、大気、鉱物、植物、動物、そして人間が出来ていった。これが、宇宙の始まりになった。物質的に見ればビッグバンだけど、その現象を引き起こしたエネルギーの状態は、自由による愛の分割変容(メタモルフォーゼ)だったのさ。
こうして、愛は自由によって分割された。とりわけ、最初に分割され、二つに分けられたとき、愛は愛と、愛と正反対のものに分けられたんだ。無限大のエネルギーのまま静止していた愛は、相対的な振幅をし始めた。0を中心にプラスとマイナスという二つの相反する領域を持つに至ったのさ。そしてさらに、それは複雑な角度でプラスとマイナスが幾重にも掛け合わされていった。それが次元というものになっていったわけ。
で、この三次元世界は、そのなかでもっともシンプルな世界だ。だから、多くをプラスとマイナスの二次元で説明できる。もちろん、それを越えた世界を説明することは出来ないよ。でも、君たちの住む三次元空間における、愛を説明するために、便宜的にプラスとマイナスのエネルギーを取り上げてみると、それが「愛」と「恐れ」なんだよ。