男性のエロス

Eros

パルファ:
愛の第一レベルがエロスだね。

エロスとは狭義には性愛を示すけれど、ここでは男女間における愛全般を含んでいる。エロスは肉体と深く関連した愛だね。本能に近い愛だから、卑俗、低級、利己愛と勘違いされる場合があまりに多い。

でも、エロスの愛は本能に近いエネルギーでありつつ、それを神聖なエネルギーにまで高めることができる、愛の最小単位であり、もっとも愛の根幹に関わるエネルギーなんだ。エロスのエネルギーを有効に高めることで、その後のステップに拡大できる、エネルギーの源泉にもなり得るんだよ。

ここで、わかりやすくするために、男性のエロスと女性のエロスに分けて、見てみることにするね。

まず男性のエロスについて、話してみよう。

傾向的に、男性は愛するという感情を把握することが苦手だ。子供時代から、「男らしさ」「女らしさ」という性的な傾向を、衣服やおもちゃ、さまざまな情報などによって身につけていく課程で、いまだに男性は「競争」「攻撃」「支配」「制御」といった特性を、よきものとして自然に身につけていくからね。たとえばミニカー、電車、刀、剣、戦い、ヒーロー、スポーツといった男の子が興味を持つものを通じて、身につけていく特性の中に、「愛」に関わるものが極端に少ない。

愛とは、単純にいえば行為としての奉仕であり、人のために何かをすることなんだ。なのに、君たちの社会では、男性に愛の意味を教える機会が不足しがちだ。愛に関わることを、女性に一任しすぎている。男性が愛を習得し始めるのは、思春期に入り、性に目覚め、女性に対して性的な欲望を感じるようになってからだからね。遅すぎるのさ。

しかも、女性をどのように愛していいか、まったくわからない中で、雑誌やマンガ、さらにはインターネットやアダルトビデオなどの性風俗の情報から学ぶために、実際にどうやったら女性を喜ばせることができるのかを、全く理解できていない。

まず、男性はたくさんの女性から愛される方がかっこいいとか、えらいとかいう、質より量を求める原始的な価値観を手放すことだね。そのような価値観は、「承認欲求」すなわち、自分の愛の不足を他者に認められることで代償しようとする、価値観だと認識したほうがいい。それは愛にはつながらないからね。

まず、一人の女性に愛されることさ。そのために、たった一人の女性に認められればいいと覚悟を決めることなんだ。そして、その女性が誰かにかかわらず、まず自分の外見を、自分のできうる範囲内で最高に高めること。

外見は中身を写すからね。

自分の中にある愛のエネルギーを使って、自分を少しでも愛することから始まる。自分を愛せない人が、人に愛を与えることなどできないんだ。少しでもまず、人に与えなくてはならないんだよ。そのために、自分をベストを尽くして格好良くするんだよね。

だって外見は、自分のためのものではなく、人のためのものだから。

外見とは表情や言葉も含まれる。自分を少しでも格好良くすることに努めれば、笑顔と良い言葉こそもっとも人を喜ばせるとわかる。

思春期に、自分を愛すことは難しいかもしれない。中身も外見も、気に入らない部分ばかりが目立つだろうね。でも、自分を認めてほしいから異性を求めても、それは愛にはつながらない。承認欲求だからね。

だから、自分の大好きなこと、ワクワクすることを一つやり続けることなんだ。

それがスポーツや音楽だけでなく、勉強でもパソコンでもゲームでもいい。とにかく夢中になれることを一つはやり続けることなんだよ。その世界の中で、共通の話題を持つ異性に、自分のワクワクを語るんだ。情熱的に生きる人の言葉は、愛に満ちているからね。

男性は、ワクワクという愛を語ることで、間接的に、彼女を同じエネルギーで愛することができると伝えることになる。

真に愛する相手に出会いたければ、共通の話題を持つ世界の中で、自分の理想のイメージを明確にしていくことだね。さまざまな異性と出会うことで、そのイメージをリアルにブラッシュアップしていくことで、よりその相手との出会いを引きよせる。

このような理想の相手に出会えたとき、彼女をもっと愛したいと思うはずだよ。心で感じる情熱の固まりを、現実に彼女に伝えたいと思うはずさ。その恋愛感情がエロスのエネルギーの始まりなんだ。

男性の多くが愛に対して繊細さに欠けるのは、この種のエネルギーを扱ったことがないからさ。熱い情熱の固まりのようなエロスの愛は、最初は自分でも驚くほどで、その取り扱いはなかなか難しいからね。だから、おぼれたり、恐れたりするんだ。

彼女が真のパートナーであるとわかり、彼女がそれを受け入れたとき、心の中のエネルギーはほとばしり、外に出ることを激しく求める。それが愛と性的な欲求が一つになる瞬間なんだ。

男性の性的な欲求は、激しく表現されることが多いため、利己的なものと思われるし、男性自身もそのようにとらえている。だから、多くの男性が失敗するんだ。

女性がトランペットだとするなら、男性はマウスピースなんだ。
 
男性は単純でシンプルな音しか出すことができない。でも、女性が複雑で豊かな音を奏でるためには、男性というマウスピースから息を吹き込まねば、決して音は鳴らないのさ。

女性の体は男性に愛されることで、快感を感じるようにできている。男性が性欲を感じるのは、目的は自分のためであろうとも、行為としては女性を喜ばせ、幸せにするためだよね。女性のために奉仕するってことだよ。女性の複雑な肉体に息を吹き込み、すばらしい音楽を奏でることは、女性にとっても最高の喜びであるし、その喜ぶ姿を見ることで男性はさらに喜びを感じることができる。

愛は与えることで、与えられるんだ。

自分だけ気持ちよくなりたいのであればマスターベーションで十分だ。女性と一つになることで得られる喜びは、自分が愛の表現者となれたことで得られる喜びなんだ。

高まりあった中で、一つに結合する。その高まりは天にも昇るものになる。この強く高まりあった最高のエネルギーこそが、愛の最小単位であり、最大の愛のエネルギー源となるエロスの愛なんだ。

現実のさまざまな行動が、訓練と経験を必要とするように、愛の行為も習熟するのに時間がいる。経験が必要だ。その経験の途上で、互いのコミュニケーションを通じて、どのようにすればより相手の快感につながるかを伝えあう必要がある。

どうすれば相手の喜びにつながるのかを伝えあい、教えあうことで、徐々にそのエネルギーの扱いに慣れてくる。そして、すばらしい愛のエネルギーと互いに一つになることで、分かち合うことができるようになる。

このようにして、男性も愛に習熟し、女性の体に奉仕し、すばらしい音楽を奏でられるようになり、エロスの愛を会得していくんだ。

愛のエネルギーは、異性のパートナーを得て、何度も創造され、増やされていく。互いに愛で満たされていく。信頼と喜び、満足、自信が二人を包み込む。

このようにしてエロスの愛は二人を幸福に包み込むんだ。そして次の段階へと拡大していく。

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