観念は固い海底:「未来は、えらべる!」レビュー8

現実世界でお金持ちになったり、成功することなど自分にはできないが、自分の心を変えるくらいなら簡単だ。よかった、これで自分も成功者だ、と安易に考えると失敗する。

先にも述べたように、自分の内面を変化させることと、体に染み込んだ癖を直すのは、ある意味同じことなのだ。早口の癖、頭をかく癖、背中を丸める癖、音を立てて食べる癖はそう簡単には直せないように、観念もそう簡単には変わらないのである。

長い年月をかけて発達を遂げた内面世界は、独特の癖を身につけてしまっている。単に「思考を変えれば」「願い事をしっかり思えば」という程度の思いなど、すぐに吹き消されてしまうのである。

例えば「お金持ちになる」「年収一千万円」「外車に乗る」「成功者になる」と思っても、心の底に「そんなの無理に決まっている」「自分には才能がない」「自分には成功する能力がない」「金持ちになどなれるはずがない」といった否定的な観念があれば、なんにもならない。強く願えば願うほど、より正反対の否定的観念を活性化してしまうことになりかねない。

我々の通常の思考は、ちょうど海に例えることができる。毎日の生活の中で、思ったり考えたりする、浅いレベルの思考は、海水のように揺れ動き、色や形を変えてしまう。それに対し、観念や定義とは、海底の硬い岩石である。それは、何年もかけて沈殿した思考の折り重なったものであり、意識の深い部分に深々と広がっている。それは固く強固で、ほとんど変化しない。

思考現実化プロセスの「思考」とは、海水のような浅いレベルの思考のことではない。岩石の海底、「観念」のことを意味している。この「観念」を変化させなくては、現実は変化してこないのだ。

毎日毎日、お題目のように唱えれば実現するわけではないし、写真や映像を毎日眺めればいいというものでもない。形だけいくらまねしたところで、深い部分の定義、観念を変化させない限り、現実に変化は生じない。いくら努力していると思っていても、現実に変化が起こらないのであれば、意識の底は微動だにしていないのである。

思考現実化プロセスを意識的に制御するのは、現実を変える以上に困難なのである。

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