簡単だという誤解:「未来は、えらべる!」レビュー6

バシャールと本田健に共通しているのは、重要な情報をあまりに簡単に表現してしまうスタイルにある。おかげで心地よくスラスラ読めるのだが、読み終わってもなかなか身につかない。

とくに内的な変化を伴う手法は、自分の内側のことだけに、簡単にできると思いがちである。これも、バシャールの言う「トリック」の一つだ。自分の外側、現実の世界を変えるのはとても難しいが、自分の内側を変えるのは簡単だと思っている。

喫煙者はよく「やめようと思えば、いつでもやめられるんだ」などと言い、家族を失笑させたりする。しみついた修正を変化させることが、いかに困難であるかを理解していないのである。「本気になれば」「気合を入れれば」「死ぬ気になれば」自分くらいすぐに変えられると、甘く考えている。

逆に、現実はそう簡単には変わらないと信じているので、世の中の動向などを新聞やテレビで見ても、自分にはどうすることもできないと、無関心だったり、傍観者的な態度をとりがちである。情熱や夢などで現実がかわるものならとっくに変わっていると覚めた態度をとり、意にそまない不幸な出来事が起こっても「仕方がない。これが人生だ」と諦めてしまうのだ。

多くの人々が感じている無力感、不条理感は、「現実に対し、自分はあまりに無力である」「現実は、自分などお構いなしに変化し、巻き込んでくる」という定義に基づいている。自分ひとり変化したくらいで、何も変わらないし、変えられないと最初から諦めてしまう。

これが、トリックだと言うのである。真実でないことを、真実だと思い込ませ、不幸な状態にとどまらせ、内的な成長を阻害しようとするのだ。

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