| 羊男のクリスマス 佐々木マキ:絵(1985年 講談社) |
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個人的な意見を言うと、村上さんが自分で描かれた(羊をめぐる冒険の)羊男より、佐々木マキさんの描かれたかわいらしい羊男の方が、僕は好きである。それにしても、この作品に出てくる「ねじけ」にしても「なんでもなし」にしても「なんとかカラス」にしても、絵書きを困らそうと思って作り出されたキャラクターのようにしか思えないんだけど、佐々木マキさんはそんなの意にも介さずけろっと描いてしまっていて面白い。ときどき村上さんはこういう実験的意地悪をする。特に豆腐ばっかり延々シリーズでやられたり、大嫌いな猫とか虫とか描かされた安西さんが、気の毒大賞であろう。 ところで僕は以前、ある出し物のために、この羊男を主役にした「羊男の冒険」というスライド劇を作ったことがあるのだけれど、とてもおもしろかった。もっとこの羊男を主人公にした絵本がたくさんシリーズで出されるといいのになと思うけど、無理かな。「図書館奇譚」とかね。 |
| 空飛び猫 アーシュラ・K・ルグィン:作、S.D.シンドラー:絵(1993年 講談社) |
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猫に羽が生えていたら、鳥はさぞかしこまるだろう。ベランダに鳥カゴ出すこともできやしない――なんて小鳥ファンは困っちゃいそうな、空飛び猫シリーズ第一弾。リアル指向のアメリカの絵本だけあって、見事なほど繊細な羽毛(?)の猫が、空を飛び野を翔け、冒険するというお話である。もちろんあの「ゲド戦記」や「闇の左手」のルグィンだから、ただの空想話ではなく、思想性もばっちり込められている。この作品では、ゴミ捨て場を命からがら逃げ出した空飛び猫四匹が、紆余曲折を経て、心のきれいな子供たちに拾われるというところまで描かれている。猫好きな村上さんが、読者から送られたこの作品の原作を見て即飛びついたというエピソードも巻末にかかれている。 |
| 帰ってきた空飛び猫 アーシュラ・K・ルグィン:作、S.D.シンドラー:絵(1993年 講談社) |
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猫に羽が生えていたら、魚はさぞかしこまるだろう。おちおち水面に上がって餌も食えやしない――なんて魚ファンは困っちゃいそうな、空飛び猫シリーズ第二弾。平和に暮らしていた四匹の小猫達が、ふと心配になって母親のいるもとのゴミ捨て場に帰ると、そこには一匹の取り残された黒猫が…。今回は、この黒い小猫ジェーンを中心に物語は展開している。汚染され、破壊されていく町の様子など、前作よりもさらにメッセージ性は濃くなっている。 |
| 素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち アーシュラ・K・ルグィン:作、S.D.シンドラー:絵(1997年 講談社) |
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猫に羽が生えていたら、リスやネズミはこまるだろう。木に登って逃げるという技が使えなくなるんだから――なんて小動物ファンは困っちゃいそうな、空飛び猫シリーズ第三弾(ふう苦しい)。今度の主役は、羽の生えていない普通の猫アレキサンダーである。わんぱくな彼が自信満々に家出をしたものの、犬に追われるわ、トラックにはねられそうになるわ、散々な目に合って、しょぼくれているところに前回の主役ジェーンが現れ、空飛び猫と出会うことになる。しかし、ジェーンもまた前作からずっと声が出ないという精神的な障害を抱えたままである。そして、この二匹に出会いが、そういった傷を少しずつ癒していく――という、かなり内的なお話になっている。 |
| ふわふわ (1998年 講談社) |
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今までも、安西さんと「絵本風」の作品を数多く出してきた村上さんだが、今回のは「風」ではなく、ほんとうの絵本である。たぶんこれは安西さんとのコンビでは初めてだと思う。20ページそこそこの薄い絵本だが、これで1200円はいささか高い気もする。たぶん、出版数を相当絞っているのだろう。 さて「ふわふわ」という題名だけでは、何が書いてあるのかさっぱりわからないが、本を見れば一目瞭然、これは猫の話である。それも、村上さんが子供のころ、芦屋の家で飼っていた「だんつう(緞通)」という猫の話である。今までのエッセイの中でも、村上さんが飼ったいろんな猫のことが書かれているけれど(ミューズとか)、この「だんつう」に関しては今までまったく出てこなかった初耳の猫である。 正直なところ、これは子供が読んでもあまり面白くない絵本だと思う。筋もないし、人も出てこない。ただ、村上さんが子供だったころ、その猫とのコミュニケーションの中で感じたことを、できるだけそのまま取り出そうと努めて作り上げた、詩のような文章が収められているだけである。たぶん、このような形でしか「だんつう」のことは書けなかったのだろう。それほど、この感情は繊細で、筆者が宝物のように大切にしてきたものであることがよくわかる。 安西さんのイラストも、ことのほかシンプルで、特に猫に関しては模様も何もない。まるで読者が自分の中で、模様や色を想像してくれとでも言わんばかりである。ただ、その「ふわふわ」とした、毛玉のような感触だけが伝わってくる。 ポエティックな、時間の止まったような、心が「かたかたかた」とコダマのように鳴るような、そんな絵本である。あるいは「子供」時代から遠く離れた「大人」のための絵本、とでもいおうか。 |